肝臓
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TAEが奏功した脾静脈・門脈幹内腫瘍栓合併肝細胞癌の1例
塚本 忠司酒井 克治木下 博明広橋 一裕街 保敏久保 正二沖本 俊明福島 康臣岩佐 隆太郎李 光春
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1988 年 29 巻 8 号 p. 1100-1105

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抄録

症例は50歳,男性.発熱及び腹痛を主訴として当科受診.血清AFP値は62,100ng/mlと高値を呈し,各種画像診断法により脾転移および門脈本幹内腫瘍栓合併肝細胞癌と診断.oneshot動注療法を行ったが腫瘍の増大と脾静脈内腫瘍栓を認めたため,2回のTAEを施したところ著明な抗腫瘍効果が得られた.
肝細胞癌の脾転移は稀であり,また脾静脈内腫瘍栓の報告例はない.原発巣のみならず転移巣においてもその輪出血管に腫瘍塞栓がみられたことは,腫瘍塞栓の形成機転を考える上で興味深い.またTAEが奏功したことより,脾転移巣および脾静脈内腫瘍栓は動脈により栄養されていると考えられた.進行肝癌に対するTAEの適応については論議のあるところであるが,本症例はその適応を考慮すれば,TAEが安全に且つ有効に行いうることを示唆するものと考えられる.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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