線維性被膜(被膜)を有する肝細胞癌14例について,抗I,III,IV型コラーゲン抗体,抗ラミニン抗体を用いたHorseradish peroxidase (HRP)酵素抗体法による光顕・電顕的観察を行ない,肝総胞癌に伴う被膜の形成機序や存在意義について検討した.被膜の非癌部側や被膜周辺の圧排された肝細胞周囲に著明な円形細胞浸潤を認め,被膜の非癌部側には多数の新生された脈管もみられた.薄い被膜の場合は増加した線維芽細胞やtransitional typeの伊東細胞,被膜周辺の肝細胞で産生されたIII型コラーゲンで形成されていた.肥厚した被膜の場合には非癌部側は主にIII型コラーゲンで構成され,癌部側はI型コラーゲンが主体をなしていた.I型コラーゲンはIII型コラーゲンと同様,線維芽細胞,transitional typeの伊東細胞,肝細胞で産生されていた.このようにして形成された被膜は,肝細胞癌の増殖にたいして防禦機構の一部となっていることが示唆された.