肝不全時の脳内芳香族アミノ酸(AAA)増加の機序に関し,門脈-下大静脈吻合(PCA),急性虚血性肝不全(AIHF)およびアンモニア負荷ラット(NH3-R)ではトリプトファン(Trp)のbrain uptake indexが有意に増加していることをすでに報告した.今回は,単離脳微小血管(BMV)を用い,Trp,フェニルアラニン,イソロイシン(Ile)の取り込みを検討した.その結果,PCA, AIHFでは中性アミノ酸(NAA)取り込みの亢進が認められ,Trpにおけるkineticsの検討から,saturable influxのVmaxの変化が重要であることが判明した.また,NH3-RでもTrp, Ileの取り込みが増加し,さらに正常ラットBMVでも高濃度グルタミン(Gln)を予め添加した場合,Trp取り込みが増加した.以上より,肝不全時には高NH3血症によって増加した脳内GlnとNAAとのexchange transportが亢進し,すなわちNAAの脳内進入が亢進することによって脳内NAAの増加がもたらされる可能性が強く示唆された.