肝臓
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肝不全ラットより単離した脳微小血管における中性アミノ酸の輸送に関する研究
とくに高アンモニア血症との関連について
中村 俊之斎藤 公志郎森脇 久隆橋本 修武藤 泰敏
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1989 年 30 巻 6 号 p. 632-642

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抄録

肝不全時の脳内芳香族アミノ酸(AAA)増加の機序に関し,門脈-下大静脈吻合(PCA),急性虚血性肝不全(AIHF)およびアンモニア負荷ラット(NH3-R)ではトリプトファン(Trp)のbrain uptake indexが有意に増加していることをすでに報告した.今回は,単離脳微小血管(BMV)を用い,Trp,フェニルアラニン,イソロイシン(Ile)の取り込みを検討した.その結果,PCA, AIHFでは中性アミノ酸(NAA)取り込みの亢進が認められ,Trpにおけるkineticsの検討から,saturable influxのVmaxの変化が重要であることが判明した.また,NH3-RでもTrp, Ileの取り込みが増加し,さらに正常ラットBMVでも高濃度グルタミン(Gln)を予め添加した場合,Trp取り込みが増加した.以上より,肝不全時には高NH3血症によって増加した脳内GlnとNAAとのexchange transportが亢進し,すなわちNAAの脳内進入が亢進することによって脳内NAAの増加がもたらされる可能性が強く示唆された.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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