肝臓
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CEA, CA19-9が著明な高値を示した肝細胞癌の一例
河野 通盛前田 直人村脇 義和堀江 裕武昭 周防川崎 寛中
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1990 年 31 巻 11 号 p. 1348-1352

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抄録

血中CEA, CA19-9が著明な高値を呈した肝細胞癌の一例を報告する.症例は48歳男性で,右季肋部痛を主訴に来院した.入院時生化学検査にて肝機能障害を認め, CEA (23ng/ml),CA19-9 (280U/ml), AFP (200ng/ml)の上昇を認めた.腹部超音波,CT検査により肝腫瘍が認められ,肝動脈造影の所見から肝細胞癌と診断し,動脈塞栓術を行った.しかし治療後も腫瘍は増大傾向を示し,各腫瘍マーカーは, CEA (370ng/ml), CA19-9 (710U/ml), AFP (16,000ng/ml)に上昇し,入院後2ヵ月で肝不全により死亡した.死後剖検で肝にEdmondson II型の肝細胞癌を認め,癌部の酵素抗体法染色では,CEA及びAFP染色が陽性であったが,CA19-9染色は陰性であった.以上の結果よりCEA, AFPは肝細胞癌により同時に産生されていると考えられたが,CA19-9の上昇は,胆汁欝滞による二次的なものと推定した.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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