1990 年 31 巻 3 号 p. 294-301
Dobutamineを末梢静脈よう5μg/kg/minの速度で点滴静注し,肝硬変患者と非肝疾患患者における肝血行動態の変化を超音波ドプラ法と肝臓カテーテル法を用いて比較検討した.門脈血流量はdobutamine投与により,肝硬変症患者と非肝疾患患者では双方とも有意に増加したが,増加率は後者の方が大きかった.また,心係数も両者とも有意に増加したが,その増加率はやはり非肝疾患患者の方が大きかった.この相違は,肝硬変患者におけるhyperdynamic stateの存在により説明され得る.非肝疾患群では,dobutamineの投与により有意な肝血管抵抗の上昇を認め,類洞から肝静脈へ至る間でのvasoconstrictionが示唆されたが,その作用は肝硬変群では欠如していた.また,肝硬変患者の門脈酸素摂取量は,門脈血流量がdobutamineに反応して増加した症例においては有意に増加しており,dobutamine使用時に門脈血流量を測定する事の重要性が示された.