1990 年 31 巻 3 号 p. 302-308
Radioactive Microsphere Methodを用いてエタノールのラット肝血流量に及ぼす変化について検討した.急性エタノール投与によりラット肝血流量は増加し,その増加は主に上部消化管由来の門脈血流量の増加に起因した.エタノール経口投与では血中エタノール低濃度より門脈血流量は有意に増加し,血中エタノール濃度が上昇しても血流増加の程度に変化はなかった.エタノール血管内投与では血中エタノール低濃度では門脈血流量に変化はなく,高濃度になると有意に増加した.肝動脈血流量はエタノール経口,血管内の両投与法とも血中エタノール濃度が低い場合は減少傾向にあり,高い場合は有意に増加した.飲酒時には門脈血流を中心に肝血流量が増加し,この変化は肝細胞のhypoxiaを代償する働きと考えられたが,その増加は消化管内のエタノールの直接作用による上部消化管の血管拡張に起因すると考えた.