肝臓
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Dibutyryl cyclic AMPの肝細胞癌治療への応用に関する研究
培養ヒト肝癌細胞およびラット初代培養肝細胞を用いた検討
松本 真岡本 康幸菊池 英亮松本 昌美辻井 正
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1993 年 34 巻 7 号 p. 517-523

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抄録

我々は,肝癌患者にdibutyryl cyclic AMP (DBcAMP)を投与し,同剤が抗腫瘍効果と残存肝機能の改善作用を示すことを報告してきた.今回,培養ヒト肝癌細胞PLC/PRF/5とラット初代培養肝細胞を用いて,増殖抑制作用の機序と細胞障害への影響について検討した.
DBcAMPは,対数増殖期のPLC/PRF/5の倍加時間を100μMで+57%, 1mMで+123%延長させ,培養液中へのα-fetoproteinおよびPIVKA-IIの分泌を抑制したが,細胞障害性の指標である遊離LDHは増加させなかった.またラット初代培養肝細胞のDNA合成に対しても抑制作用を示したが,同細胞にD-galactosamineを投与して作成した肝細胞障害に対しては保護作用を示した.しかし,PLC/PRF/5に対するMitomycin Cによる細胞障害に対しては,併用により,相加的な細胞数の減少作用を示した.
以上の成績は,臨床的にDBcAMPが細胞障害に対して保護的でありながら抗腫瘍効果を示すという現象に対応するものと考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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