アルコール性肝障害の組織学的所見を明らかにすることを目的として,文部省総合研究「アルコール性肝障害」(班長高田昭教授)参加施設から提供された143例の肝生検標本を,肝炎ウイルスマーカー陽性の大酒家群35例,肝炎ウイルスマーカー陰性の大酒家群81例,非大酒家群27例に分けて組織学的に検討した.ウイルス性あるいは輸血後の慢性肝炎との組織学的鑑別上,星芒状線維化,肝細胞周囲性線維化,門脈域線維の稠密化および肝細胞の風船様腫大が有用であった.肝炎ウイルスマーカー陰性の大酒家群の19.8%で,ウイルス性慢性肝炎と鑑別困難な,中等度以上の炎症所見を認めたが,その原因についてはアルコール性慢性肝炎の存在を含め,今後の検討が必要と考えられた.また,アルコール性肝炎において,各施設における臨床的診断と,われわれの組織学的診断では一致率が低かった.