肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
切断後の肝臓神経の再生に関する免疫組織化学的研究
田所 文彦
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 35 巻 1 号 p. 29-38

詳細
抄録

肝移植が頻繁に行われるに伴い,肝臓に分布する神経の切断後の影響が重要な問題になっている.本研究ではラット肝に分布する神経切断後の変性と再生の過程を神経再生のマーカーであるGAP-43抗体を用いて免疫組織化学的に検索を行った.肝門部より8mm離れた部位で肝臓に進入する神経を切断後直ちに接合し0, 1, 2, 3, 4, 7, 14, 21, 42, 56日後の神経の変性再生像を観察した.切断前の正常なGAP-43の反応は神経線維の中のいくつかの軸索の周囲にリング状に認められた.切断後1日目ではリング状の陽性像が消失し,2日目頃より微弱なびまん性反応が再び現れる.3日目より次第に反応が増強しはじめ,14から21日目で反応はピークになり,神経線維全体が強い陽性像な示す.その後反応は次第に減弱し,42から56日目で切断前と同じ様に,一部の軸索のみがリング状に反応するようになっていた.免疫電顕法によりGAP-43陽性の軸索は再生してきたものと判断された.以上の結果より,切断された神経は2日目から再生を開始し,42から56日目で再生が完了するものと結論された.

著者関連情報
© 社団法人 日本肝臓学会
前の記事 次の記事
feedback
Top