肝臓
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開腹下マイクロウェーブ焼灼術が奏功した肝硬変併存
Stage IV-A肝細胞癌の1症例
松田 政徳浅川 真巳鈴木 哲也長堀 薫藤井 秀樹松本 由朗
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1997 年 38 巻 1 号 p. 46-51

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抄録

症例は76歳, 女性. 近医で肝硬変の診断で経過観察中, 肝外側区域に肝細胞癌 (Tu-1) の発生を指摘された. 肝予備能不良のため, 肝動脈塞栓療法およびエタノール注入療法をうけたが腫瘍の縮小が認められず, 血中AFP値が上昇, 前区域にも腫瘍 (Tu-2) が出現したため, 当科入院となった. 入院時血液検査では臨床病期はIIで肝予備能は不良であった. HCV抗体陽性で, 血中AFP値は1, 620ng/mlであった. 術前の画像診断で, 外側区域に直径3.8cmと前区域に直径2.0cmの肝細胞癌が存在し, Stage IV-Aと診断された. 1995年7月11日開腹し, 超音波ガイド下に両腫瘍のマイクロウェーブ焼灼術 (MCT) と胆嚢摘出術を施行した. 腫瘍生検でTu-1は低分化肝細胞癌でTu-2は高分化から中分化肝細胞癌と診断され, 多中心性発癌が示唆された. 術後の血管造影で腫瘍濃染像の消失と, 血中AFPが36ng/mlへと著明な低下をみた. 退院後は外来にて動脈内注入療法を実施しているが術後10カ月現在AFPの上昇なく, 画像上も再発の兆候は認めない. 肝切除の適応外で, TAEやPEITの効果が不十分なStage IV-A症例でもMCTによる局所療法によりcomplete responceが得られるものと考え報告した.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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