1997 年 38 巻 9 号 p. 553-558
症例は64歳, 男性. 糖尿病, アルコール性肝障害で外来通院中に胆道系酵素の著明な上昇と肝予備能の低下, 労作時呼吸困難を認め入院した. 著明な低酸素血症を認め, 呼吸機能検査では拡散障害を認めた. 心臓および肺に器質的異常はなかったが, 肺血流シンチグラフィーにて脳, 腎実質の描出があり, Hepatopulmonary syndromeと診断した. 基礎肝病変に関しては腹腔鏡, 肝生検にて胆汁性肝硬変と診断した. 内視鏡的逆行性胆管造影, 大腸内視鏡にて原発性硬化性胆管炎や炎症性腸疾患の所見はなく, 抗ミトコンドリア抗体陰性原発性胆汁性肝硬変と考えた. 低酸素血症に対してポリミキシンB, 塩酸ミドドリン, PGF2α, 酢酸オクトレオチドの投与を行ったが有意の改善はなく, 在宅酸素療法となった.