肝臓
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肝温虚血再灌流障害におけるnafamostat mesilateの類洞内皮細胞及び肺胞細胞の保護作用に関する実験的研究
河野 悟
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1998 年 39 巻 7 号 p. 428-438

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抄録

ラットを60分間, 70%温虚血状態にし, その後再灌流することにより肝障害を誘導する実験モデルを作成した. このモデルで再灌流前にnafamostat mesilate (以下NM; 商品名フサン®鳥居薬品, 東京) を静脈内投与することによる類洞内皮細胞及び肺胞細胞の保護作用の有無について検討した. 虚血-再灌流にてTNF-αが産生され様々な組織障害がもたされるが, NM投与群は非投与群に比し再灌流後60, 120分で障害が有意に抑制され, 肝好中球数も再灌流後120分で減少していた. 虚血-再灌流後における肝類洞内皮細胞障害を血中ヒアルロン酸の定量及び形態学的に検討したところ, ヒアルロン酸はNM投与群で非投与群に比べ再灌流120分後で有意に低値を示し, 組織学的にも類洞内皮細胞の障害は明らかに軽度であった. また, NM投与群の再灌流360分後の肺胞細胞の障害は弱く, 間質性肺炎類似所見は非投与群に比し組織学的に軽微であった. 以上の結果より, 予めNMを投与しておくことにより, 肝温虚血後再灌流時TNF-αの産生あるいは活性が抑制され, その結果, 類洞内皮細胞のみならず肺胞細胞に対してもその保護作用が認められた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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