肝臓
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エタノール・塩酸ミノサイクリン頻回注入療法により, 低下した左腎機能の回復をみた巨大肝嚢胞の1例
増永 高晴篠崎 公秀竹田 亮祐荒木 一郎上野 敏男
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1999 年 40 巻 2 号 p. 79-85

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抄録

症例は88歳女性で, 肝左葉外側区より発生した単純性巨大肝嚢胞例である. 嚢胞は最大径22cmで左腹腔内全体を占め左腎及び左腎への脈管を圧迫し左腎機能障害を惹起していた. 嚢胞治療後左腎機能は回復 (腎シンチによる分腎機能: L-GFR4.8ml/min→19.1ml/min) した. 肝嚢胞により左腎機能障害を来した報告は本邦では本例が初めてである. 嚢胞は単房性で, 嚢胞壁は平滑で一部石灰化を伴っていた. 嚢胞液が初回1680ml排液され, 嚢胞液中のCA19-9, CEA, TPAが著明な高値を示したが, 性状は黄褐色漿液性であり, 悪性細胞や腫瘍細胞を認めず細菌培養及び寄生虫検索のいずれも陰性であった. 嚢胞腔はドレナージチューブ留置下の無水エタノール頻回注入により著明に縮小したが, 嚢胞腔消失には塩酸ミノサイクリンの追加注入が必要であった. 嚢胞腔内へのエタノール注入後のエタノール血中濃度が注入回数の増加に伴い低下したことより, エタノール注入を繰り返すことで嚢胞壁よりのエタノール吸収効率が低下することが推測された.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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