関西病虫害研究会報
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原著論文
イネのRhizoctoniaおよびSclerotium属菌核病菌の生育および菌核形成・発芽に及ぼす各種CO2およびO2濃度の影響
紙崎 啓昌荒川 征夫稲垣 公治
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2015 年 57 巻 p. 11-18

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抄録

生育後期のイネに各種の菌核病を引き起こす赤色菌核病菌,紋枯病菌,灰色菌核病菌,褐色菌核病菌,および球状菌核病菌の5菌種を用いて,CO2 およびO2 の各種濃度が,これら病原菌の生育,菌核形成および菌核発芽に及ぼす影響を調べた。最初に,5菌種いずれも各5菌株を用いて,CO2/O2 濃度が0.1/20%区と 5/5%区の2区で菌生育率[対照区(CO2/O2 濃度が0.03/20%)における菌生育量[mm]に対する割合(%)]をみたところ,各菌種とも種内で大きな差異が見られなかった。また,CO2 濃度を0.03-15%の範囲内で4区,O2 濃度を 1-20%の範囲内で4区において,5菌種の菌生育をみたところ,CO2 濃度15%区で22-53%,O2 濃度1%区で28-47%の割合で菌生育率が低下した。CO2 およびO2 の菌生育への影響は5菌種中では紋枯病菌が最も受けやすく,球状菌核病菌と褐色菌核病菌,とくに球状菌核病菌は最も影響を受けにくいことが明らかとなった。菌核形成に関して紋枯病菌と褐色菌核病菌を用いて調査した結果,CO2 濃度 5%区では対照区に対する減少率が42-95%,15%区では57-100%(非形成)であり,さらに菌生育不良を引き起こすCO2 /O2 濃度(5/5%)に紋枯病菌および褐色菌核病菌菌核を60日間置いた場合でも,菌核発芽率は対照区と同様に86-99%と高率であった。これらの調査結果は,水田土壌中における各種菌核病菌の進展や,その後の水田内における病気の広がりを理解するのに有効であると考えられる。

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