2026 年 68 巻 p. 15-21
ダイコン栽培におけるIPM推進のため,静岡県内のダイコン産地2地区において,ハモグリバエ類のダイコン葉における生息株率,天敵寄生蜂のハモグリバエ類への寄生率および天敵寄生蜂の種構成を調べた。その結果,ハモグリバエ類のダイコン葉における生息株率は,三方原地区で0.6~28.2%,榛原地区で0~28.6%であった。また,ハモグリバエ類のうち,そのほとんどはナモグリバエであり,一部マメハモグリバエも確認された。加えて,天敵寄生蜂のハモグリバエ類への寄生率は,三方原地区で8.3~79.5%(平均52.0%),榛原地区で0~48.6%(平均17.3%)と,地区により違いがみられた。この理由として,各地区の周辺での他作物の栽培状況,風速および農薬の散布履歴の違いが影響していると考えられた。天敵寄生蜂の種構成はヒメコバチ科Eulophidae寄生蜂ではDiglyphus isaeaが最も優占しており,次いでDiglyphus minoeusが優占していた。コマユバチ科Braconidae寄生蜂では,Dacnusa sasakawaiが優占していた。コガネコバチ科Pteromalidae寄生蜂では,Halticoptera circulusが優占していた。これらの種が優占していた要因として,種ごとの至適温度や薬剤感受性の違いが影響していると考えられた。また,種構成には地区による差はあまり認められなかった。これらのことから,天敵寄生蜂はダイコン葉に生息するハモグリバエ類の密度抑制に大きく寄与していることが明らかになった。また,ハモグリバエ類に対する天敵寄生蜂の寄生率は地区により大きく異なることが明らかになった。今後は,この天敵寄生蜂を活用するため,天敵寄生蜂に影響の少ない殺虫剤の探索,天敵寄生蜂各種の至適温度の調査が必要であろう。