関西病虫害研究会報
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チオダンの枝幹散布によるコスカシバの防除
安東 和彦
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1968 年 10 巻 p. 21-27

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抄録

殺虫剤の枝幹散布によるコスカシバの有効な防除法を見出す目的で, チオダンの散布時期, 回数, 濃度などについて種々検討した. その結果, 本試験地では大体6月中旬 (成虫羽化初期) および9月中旬 (羽化最盛期) の2回, 主剤0.2~0.1%の比較的高濃度で散布すると非常に高い防除効果の期待できることが分った.
1) コスカシバの有効な防除法を見出す目的で, 1962年から1965年にかけてチオダンの枝幹散布によるコスカシバの防除試験を滋賀県甲賀郡甲西町菩提寺の桃園において継続実施した.
2) チオダン乳剤の散布 (主剤0.2~0.1%の濃度) は, 晩秋期既に桃樹に食入定着している若令幼虫に対しても高い殺虫効果があり, 死虫は多くの場合その尾端を食入場所から外部に突出した状態で死んでいた. なお生存虫と死虫との間に生育程度の有意差は認められなかった.
3) コスカシバは成虫羽化時期が長いので, 周年防除のためにはチオダンを主剤0.2~0.1%程度の高濃度で, 6月中旬 (羽化初期) および9月中旬 (羽化最盛期) に各1回ずつ枝幹散布すると非常に高い防除効果があり, 9月中旬1回のみの散布でも相当にコスカシバの被害を減少させ得た.
4) この防除方法は薬剤散布時期が, 摘果や袋掛さらには収穫等の作業時期と重なることがなく, また果実汚染の危険性が非常に少ないので実施しやすいという長所があり, 本試験地と成虫羽化の樣相を異にする他地域でも応用できる.
5) チオダンの他に, エンドリン, リンデンにも優れた防除効果が認められ, さらに今後の研究を要するが, DDTはそれらに比較すると効力が劣った.

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