一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
(一社)日本家政学会第55回大会
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文書の明視性に関する研究
第6報 明視性評価に対する字体の影響
*秋月 有紀井上 容子
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p. 232

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抄録

[目的]文書の明視性は明視三要素(背景輝度、文字寸法、文字と背景の輝度対比)と作業者の視認能力(最大視力)に大きく左右されるが、それ以外の視対象の物理要素も評価に影響する。本報では文書の字体が読み易さ評価に及ぼす影響を検討し、これまでに提案している明視性評価法への適用方法を示す。[方法]明視性評価法の基準視標は明朝体の無彩色日本語文書(輝度対比0.93、背景反射率0.87)であり、文字寸法に対する文字間隔は字間比1かつ行間比2である。この基準視標に対して、字体(ゴシック体・教科書体)を変化させた視標に対する読み易さ評価を求める。その他の実験変数は、背景輝度(0.83~1400cd/m2)と文字寸法(17.8~56.2分)である。被験者は最大視力と年齢の異なる若齢者30名と高齢者の15名である。[結果]背景輝度が低く文字寸法や最大視力が小さいという明視性の低い条件では、ゴシック体の読み易さが明朝体・教科書体より高くなり、明視性が十分高く「読み易い」評価に飽和する条件では明朝体より評価が低くなる。字体の違いは線の太さ(寸法へ置換)や輝度対比の違いと考えることができ、ゴシック体は他の字体より大きく、明朝体と教科書体はほぼ等しい。これらの物理状態の違いに対して寸法や輝度対比の補正を行うことで評価の違いを説明できると考えられる。字体が基準視標(明朝体)と異なる場合も文書の読み易さ評価に対して相対視力(最大視力と文字寸法を一元化する指標)は適用可能である。基準視標の明視性評価法は教科書体の視標にはそのまま適用可能だが、ゴシック体に適用した場合、その予測値は安全側になる。ゴシック体は評価が飽和しない有効範囲が他の字体よりも狭く、字体による物理状態の違いを補正する必要がある。

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© 2003 一般社団法人 日本家政学会
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