一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
(一社)日本家政学会第55回大会
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ナイロンおよびポリエステル染色布の耐光性における作用スペクトル
*今泉 麗芳住 邦雄
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p. 250

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抄録

<目的> 染色布の変退色性の検討においてその波長依存性すなわち作用スペクトルの情報が不可欠であることは論を待たない。分散染料は、合成繊維の着色に広く用いられている。その際の特徴として、基質によって染色堅ろう度が大幅に変化することが知られている。特に、ナイロン繊維において耐光性が減少する傾向が一般的に認められている。しかし、それらにおける変退色の要因については明確にはなっていない。本研究では、同一の分散染料を用いて異なる基質染色した場合の光退色における照射波長の影響を明らかにすることを目的としている。<方法> 試験染色布として、分散染料からC.I Disperse Blue79およびC.I Disperse Yellow64を選び、ナイロンおよびポリエステル織布を染色して実験に供した。試験布への光照射は、モノクロメータを用い、波長別に行った。変退色の評価は、測色計によってL*a*b*値を求め、色差を計算して行った。また、試験布の反射スペクトルは、積分球付き分光光度計によって求めた。<結果と考察> ナイロン布をC.I Disperse Blue79で染色した試験布の変退色特性を検討したところ、可視光領域での変退色は実質的に無視しうる程度であることがわかった。しかし、UVA領域にも変退色の感度を有し、UVB領域280nm付近に最大の感度が存在していた。次いで、同一の染料を用いてポリエステル布を染色した場合の変退色特性を検討したところ、UVA領域にはほとんど感度が無く、310nm付近に鋭いピークを有することが認められ、UVB領域の紫外線によってのみ変退色することが分かった。これがナイロン布に比較してポリエステル布が耐光性が高い理由と言える。一方、C.I. Disperse Yellow64を用いて同様の実験をしたところ、ナイロン布の変退色感度は300nm以上には実質的に無いことが明らかとなった。これが、この染料の耐光性が高い要因と言える。ポリエステル布でもほぼ同様であってが、UVC領域でのピーク位置は異なっていた。以上の結果は、染料の耐光性が基質によって大幅に影響されることを示している結果である。

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© 2003 一般社団法人 日本家政学会
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