一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
(一社)日本家政学会第56回大会
セッションID: 2-1-40
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オレイン酸ナトリウム添加グリアジンゲルの形成性とそのフィルム化
*東  真理太田 尚子
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抄録

目的 私達は既に種々のタンパク質(ゴマ13Sグロブリン、米グロブリン及びβ_-_ラクトグロブリン等)に炭素鎖長10以上の脂肪酸塩を添加する事によって保水性、保形成の優れたゲルを形成し得る事を報告してきた。本研究では、これらグロブリンタンパク質とは溶解特性の異なる小麦グリアジンのゲル物性にオレイン酸ナトリウム添加が与える影響を物理化学的に明らかにすると共に、その応用の一つとして可食性フィルムの調製を試みた。
方法 まず、グリアジンを可溶化する為に、70%エタノールを用いて乳化し、オレイン酸ナトリウム(0_から_2%)添加条件下で、常温下での状態変化を観察した。その後ゲル状凝集物が得られたものについて遠心分離法を用いてゲルの保水性を評価した。また、そのゲル形成過程を動的粘弾性測定装置にてモニターした。更に、形成したゲル(厚さ約1mm)を紙の間に挟み荷重をかけて脱水させフィルム化した。形成したフィルムは水蒸気透過性試験を行い、水蒸気に対するバリアー性を評価した。
 結果 20%グリアジンは、40.8%エタノール・0.1N水酸化ナトリウムの共存下で4日後、塊状凝集体(pH 8)を形成した。また更に、2%オレイン酸ナトリウムを添加する事により、保形性は劣るが保水性の高いゲル様凝集物を生じた。動的粘弾性測定により、混合後約60時間でゾル_-_ゲル転移し、約6日で貯蔵弾性率が約20000Pa、損失弾性率が約10000Paに達した。更にゲルを脱水し調製したフィルムの水蒸気透過性を測定したところ、ポリエチレンフィルム(厚さ19ミクロンの基準物質)に比べてバリアー性は劣るものの、無添加グリアジンフィルムのそれに比べ、約2倍のバリアー性を有する事が判った。

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© 2004 一般社団法人 日本家政学会
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