(目的) 太陽光および各種人工光源からの光は染色物の変退色要因の1つであり、衣料品や染料、絵の具などの変退色などが危惧されている。本研究では、2種類の分散染料によるポリエステル染色布を用いた。キセノンアーク灯による光変退色特性を検討し、染料の共存の影響に着目する。(方法) 分散染料の中からC.I.Disperse Orange 73およびC.I.Disperse Violet 93:1の2種類を選定した。ポリエステル白布をそれぞれの染料単独で染色した試験布と2種類の染料を用いて染色した試験布を実験に供した。試験布への光照射はATLAS製フェーディングテスターで行った。放射照度を一定(420nm:0.75W/m2/nm)に設定し放射照度を制御した。変退色の評価は、一定照射ごとにミノルタ製色彩色差計CR_-_200型を用いて、L*a*b*値を求め、未曝露の試験布との色差を求めた。(結果) いずれの試験布においても、曝露時間の増加につれて、直線的ではなく曲線的に飽和する特性として色差が増加した。150時間曝露後の色差はC.I.Disperse Orange 73は色差17.0、C.I.Disperse Violet 93:1は17.5と著しい変退色特性を示した。C.I.Disperse Orange 73とC.I.Disperse Violet 93:1の2種類の染料を混合して用いた染色布においては、単独で染色したものよりも堅ろう性が高くなる現象を見出した。すなわち、この結果はC.I.Disperse Orange 73がC.I.Disperse Violet 93:1と共存することにより、吸収された光エネルギーが染料破壊に使われない過程が生じるとして理解される。