抄録
目的 日常の食生活の外部化は,女性の社会進出と同時に食品産業や外食産業の商品開発により増加している.特別な日も例外ではなく,その外部化は中食の担い手であるCVSでのお節料理の販売実態から増加傾向にあることは明らかであるが,その質的実態は明らかではない.また正月の外食実態の調査報告もみられない.著者らは,これまで正月三が日の家庭内の食を報告してきた.ここでは,正月の外食実態の質的変化を時系列的に分析する.方法 1986年から20年間,首都圏にある大学(短大含む)の学生を対象として,正月三が日に喫食した食品・料理を調査した.毎年80名から200名に調査票を配布し,自記式留置法により記録調査した.有効回答票は,観測年,日,時刻,料理名,作り手,喫食場所,その他の項目について分類ごとのコード番号を付し,データベースを作成した.作り手と喫食場所の要素から,家庭以外で喫食した食品・料理を抽出し,それらに関する情報を集計し,SPSSによる統計処理を行なった.結果 1986年_から_2005年の調査回答総数は2,789人,有効回答率は各観測年91.2%以上を示した.三が日に喫食した総料理数は87,234品,主食,副食,汁物の67,147品を分析した.外食率は20年で7.3%_から_16.5%を推移し,観測開始年より増加傾向が見られ,元日の外食率が高くなった.外食内容はパン,洋風の麺料理,お節料理以外の副食が多かった.外食の理由について,元日は初詣や旅行, 2日は娯楽, 3日は新年会が多く,またアルバイト等の理由もみられた.若年者の三が日の外食は新年の行事に伴うものの他に,日常生活の延長による理由もかなりあった.