目的 衣服に付着する脂肪汚れは多いが,不溶性のため家庭洗濯では充分に除去できないのが現状である.脂肪分解酵素「リパーゼ」は市販洗剤に不可欠な配合成分であり,これまで水晶振動子法を用い,固体脂肪汚れの除去に対する脂肪分解酵素の効果と界面活性剤共存下での酵素の作用について調べた結果,界面活性剤の存在下で酵素を添加すると界面活性剤のみ,酵素のみよりも脂肪が除去されることがわかった.
本報では,より実際の洗浄系に近い方法として汚染布を用いた洗浄実験を行い,洗浄前後の表面反射率より洗浄率を算出し,脂肪汚れの洗浄性を評価することを目的として,実験に使用する自製の人工汚染布作成方法について検討する.
方法 脂肪汚れラードを四塩化炭素100g中に分散し,この溶液を標準綿白布に滴下し,自然乾燥後,40℃で3時間熱処理をしたものを人工汚染布とした.脂肪は無色であるため,着色物質に油溶染料・カーボンブラックを用い,汚染布作成時に脂肪を着色して滴下,または洗浄後に汚染布を染色することにより表面反射率が測定できるようにした.
結果 1)カーボンブラックを用いた場合,カーボンブラック量により表面反射率はかなり異なる.2)油溶染料の分散は難しく,汚染布作成後に染色するとムラが生じ,使用した分散剤の影響を受ける.3)油溶染料・カーボンブラックいずれを用いた場合においても,ラードの量が増すと表面反射率は低くなる.4)作成した汚染布を洗浄した場合,水晶振動子による観察結果と同様に,界面活性剤と酵素の共存下において最も高い洗浄率が得られる.