抄録
[目的] カンガとは,ケニアやタンザニアを中心とした東アフリカの民族服である.大きさが経 110 cm × 緯 165 cmの1枚の薄布で,体に巻きつけて着用する.ケニアでは今もなお民族服であるカンガを日常服として広く用いている.その理由を文化的・生理的二つの側面から検討する.
[結果]
‐文化的側面から‐
色彩豊かなカンガは,ヨーロッパ植民地支配下のもと奴隷制度廃止により約150年前に登場した.調査により,カンガの原型となったのは奴隷用の黒/紺の単色で染色された服,カニキであることが明らかとなった.人々は,カンガのデザインの一部であるジナという文章部分を通じて,ことわざ・人生教訓を学ぶ.そして,言葉で表現できない感情を伝える道具としても用いている.また,人々に啓蒙する道具としても有効な媒体であり,生活の質に対する意識を高めることに重要な役割を果たしている.以上より,カンガはメッセージを表現するツールとして非常に有効な手段であるため,今もなお,広く使われているものと考えられる.
‐生理的側面から‐
Mecheelの推定式を用い,カンガの環境適応域を検討した.その結果,17.5 ~25 ℃ の広い環境適応域を示した.これより,内陸部であるナイロビには1年を通して,海岸地域のモンバサには6 ~ 9 月の気候に適応していることが明らかとなった.カンガは軽量であるものの,薄布を身体に巻きつけることにより,衣服下空気層を保持する為,幅広い適応域を示したものと考えられる.また,着装条件を自由に変化できるため,適応域をさらに広くすることもできる.よって,温熱的快適感を得るのに調節しやすい衣服であるため,人々に広く用いられていると考えられる.