一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
60回大会(2008年)
セッションID: 2A12
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2日目口頭発表
豊かな人間性の形成に及ぼす食の影響
*磯部 由香辻 友衣湯川 夏子平島 円久保 加織
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キーワード: 食生活, 食育, 豊かな人間性
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抄録

【目的】近年、食生活および食生活を取り巻く環境が変化しており、その影響が顕在化している。これに対応し、解決を目指す取り組みとして食育が推進されている。これまで行われてきた食育は、栄養や食品の知識習得など、身体的健康の充実を目指すものが主流であった。これは、正しい栄養摂取と身体的健康との関係が明白であり、指導を具体的に行いやすいところにあると思われる。一方、食育の指導目標には、身体的健康に加え、精神的健康の充実があげられている。しかしながら、食育に起因されるとする精神的健康との関連については明確にされていない。そこで本研究では「幼少期の豊かな食生活が精神面を育成し、ひいては豊かな人間性を形成する」という仮説をもとに因果関係を検証した。
【方法】三重、大阪および滋賀の幼稚園、保育園、小学校(1~3年)に通う子を持つ保護者(調理担当者)を対象に、2007年10~11月に質問紙調査を行った。475部を配布し、420部を回収(回収率88.4%)、有効回収数は345部(72.6%)であった。調査項目を「幼少期の食生活」と「人間性」に分け、これらの相関、因果関係について分析を行った。
【結果】幼少期の食生活と人間性の間に、正の有意な相関がみられた。下位尺度間においても幾つかの相関が見られたことから、幼少期の食生活と人間性は、密接な関係にあることがいえる。また、幼少期の食生活を構成する中の「家族との充実した食生活」因子が、共感性、道徳性、社会性、そして人間性の形成に、最も強い影響を与えていたことが明らかとなった。以上より、仮説は証明され、豊かな人間性の形成に、幼少期の食生活は影響を及ぼしていることが認められた。

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© 2008 一般社団法人 日本家政学会
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