目的 機能性食品成分による生活習慣病予防の分子機構解明を目指して、我々はプロスタグランジン産生の律速酵素である誘導型シクロオキシゲナーゼ(COX-2)の発現抑制、そしてその発現抑制に関与する核内受容体PPAR活性化を指標にした研究を続けている。今までに赤ワインに含まれるポリフェノール・レスベラトロールがPPARα活性化を介して脳保護効果を持つことを報告してきた。また、種々の植物油の機能性を評価したところ、タイム油等の精油においてCOX-2の発現抑制が見出され(1)、さらにCOX-2発現抑制およびPPAR活性化の効果をもつタイム油の成分を同定した。今回は、タイム油以外の精油およびその成分について、両効果を検討したので報告する。
方法 COX-2発現抑制は、ウシ血管内皮細胞にCOX-2レポーターベクター・PPARγ発現ベクターを共導入した後、種々の精油及びその成分を添加し、LPS刺激によるCOX-2発現誘導に対する抑制効果を測定した。3種類のPPAR(α, β/δ, γ)の活性化は、同細胞にPPREレポーターベクターとそれぞれのPPAR発現ベクターを共導入して測定した。
結果 バラ油においてCOX-2発現抑制、PPARα,γの活性化が認められ、その効果にはバラ油の2種類の成分が主に関与することを見出した。
(1) 堀田真理子、中田理恵子、井上裕康 日本家政学会誌 59, 373-378 (2008)