目的 衣服を手にする時,私たちは鏡の前に立ち,その衣服が自分に似合うかどうかを確認する.その際,自分の体型に合っているかということと同時に,顔を引き立てているか,少なくとも損なうことがないかを判断する.しかし,衣服デザインでは衣服そのものの美しさが中心であり,顔との関係を前提としたものではない.そのため,自分の顔をより良くみせる衣服を着用しようとする場合,個人の趣味や経験などに頼ることとなる.また,近年,平均寿命が延びたことは衣服と顔が関わる期間も延びたと考えることができ,特に,高齢期の顔とはこれまで以上に長期にわたって関わることになる.このため,衣服と高齢者の顔の関係を客観的に解明する必要があるのではないかと思われた.高齢者用衣服について,被服構成面で多くの研究が行われているが,表面意匠からの検討はあまりみられなかった.そこで,本研究では,高齢者用衣服のデザイン性向上を目的に,高齢者の顔がより良くみえるテキスタイルデザインを検討することとした.ここでは,高齢者女性の顔にテキスタイルの明るさが及ぼす影響について検討する.
方法 試料は高齢者女性の顔画像とテキスタイル画像を組み合わせたものである.なお,テキスタイル画像は無彩色の無地テキスタイルと柄物テキスタイルとした.また,比較のため,20代女性の試料を用いた.これらから輝度平均および輝度ヒストグラムを求めた.
結果 高齢者女性と20代女性では輝度平均に大きな違いはみられなかった.しかし,輝度分布は異なるものとなったことから,それぞれの印象に違いを及ぼすと考えられる.