一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
64回大会(2012年)
セッションID: 3E-5
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口頭発表 5月13日 被服
インドネシア・アチェの人々のくらしと衣服・布づくりのもつ意味
*松本 由香佐野 敏行ビンティ・ムハマド・ザイン ヘラワティ
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抄録

目的 本研究では、インドネシアの西端に位置するアチェ州(ナングロ・アチェ・ダルサラーム州)の事例をとりあげ、衣服・布づくりが、人間にとってどのような意味をもつのかを考察する。
方法 2009~2011年度に行ったアチェ州各地でのフィールド調査におけるソンケット(緯糸紋織)、バティック(臈纈染)、刺繍などの手工芸工房、仕立屋、ブティック、裁縫教室等の52の施設でのインタビュー資料を用いる。
結果 アチェでの衣服・布づくりは、アチェ州各地で、会社・工房経営者が1集団(1 kelompok)のディレクター(pengusaha)となり、近辺に住む職人(pengrajin)の女性たちの生産を管理し、彼女らは、育児・家事の合間に内職するという方法で行われてきた。そしてpengusahaはできたものを集めて市場などに出して売り、売り上げから工賃をpengrajinに渡す。手工芸品は、女性公務員および公務員の妻で構成される各州、各県の推進組織DEKRANAS(全国手工芸品協議会)によって、生産する人々の生活支援と伝統的民族文化の保存を目的として、デザインの洗練、生産・販売の促進がはかられてきた。このようなアチェの手工芸は、2004年のスマトラ島沖地震・津波で被災した人々の生活・心をケアする役割を果たし、人々の自立を支援するものとなってきたといえる。またDEKRANASの振興活動にたずさわる女性たちは、そのソシアル(sosial 社会貢献)な活動を楽しみであると語る。さらに民間の工房経営者の中には、自らの伝統的民族文化の重要性を認識し、伝統文化を保存することに生き甲斐を感じて仕事をする例がみられる。以上のように、手工芸は、アチェの女性たちの生計の手段であるとともに、楽しみ、生き甲斐であるといえる。

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© 2012 一般社団法人 日本家政学会
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