一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
64回大会(2012年)
セッションID: 3E-13
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口頭発表 5月13日 被服
オゾンホール発生時の南極におけるコラーゲン人工皮膚を利用したUVカット素材の防御性能評価
*山下 稚香子高橋 哲也小倉 孝之田中 啓友服部 俊治工藤 栄伊村 智神田 啓史
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抄録

目的
現在、南極上空ではオゾン層の破壊が進行し、春先ではオゾン量が平常のおよそ半分から1/3にまで低下している。今後、オゾン量の減少に伴い、より短波長領域の紫外線まで地上に照射されることも懸念される。紫外線は、皮膚のコラーゲンにダメージを与え、しわ、たるみ、しみのような皮膚障害を生じさせる。本研究では危険な紫外線から被服によって人体を守るべく、コラーゲンシート(以下、コラーゲン人工皮膚と記す)に紫外線カット素材を貼り合わせてオゾンホール発生時の南極で曝露し、紫外線カット素材の防御効果について調べた。
方法
紫外線カット素材として、異なる量の酸化亜鉛を添加したポリプロピレンフィルムを作製した。コラーゲン人工皮膚をフィルムで覆って、南極にて屋外曝露し、春季と秋季を比較することによって、オゾンホール発生時の紫外線防御効果について調べた。曝露後のコラーゲン人工皮膚から酢酸抽出液を採取した後、ニンヒドリン分析、ビューレット分析、電気泳動分析を実施した。
結果
オゾンホール発生時である春季曝露の場合は、秋季曝露に比べて、曝露後のコラーゲン人工皮膚は酢酸に抽出されやすく、抽出液中の総アミノ酸量は2.8倍程度も多かった。つまり、春季曝露の方が秋季曝露に比べて紫外線による損傷が大きかった。しかし、酸化亜鉛を添加して作製したポリプロピレンフィルムで覆って曝露した場合、酸化亜鉛添加量が0.40v%の場合では末端アミノ基濃度が1/5、総タンパク量は1/3にまで減少した。つまり、オゾンホール発生時でも、酸化亜鉛の添加によってコラーゲン人工皮膚の劣化を有効に抑制できた。これらのことにより、酸化亜鉛を添加した繊維素材はオゾンホール発生時でも紫外線を有効に防御し得ることがわかった。

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© 2012 一般社団法人 日本家政学会
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