一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
64回大会(2012年)
セッションID: 3E-14
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口頭発表 5月13日 被服
光触媒酸化チタンを添加した消臭性アクリル系繊維
*高橋 哲也鶴永 陽子山下 稚香子
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抄録

目的
消臭繊維に対する社会的ニーズが非常に高まっている。近年、環境浄化の技術として光触媒酸化チタンが注目を集めている。しかし、繊維に酸化チタン粒子を練り込んだ場合、繊維内部に包埋されやすいために消臭効果が現れにくい。アクリル繊維は、菊花形の断面構造をしているために比表面積が大きい。そこで、繊維に酸化チタン粒子を練り込み、消臭性を有するアクリル繊維の開発を試みた。
方法
酸化チタンの添加効果を高めるため、アクリロニトリル(ANと略)とは非相溶性で且つ親水性も高いセルロースジアセテートをブレンドして湿式紡糸を行った。さらに、得られた繊維に対してアルカリ鹸化処理を用い、ジアセテート成分をセルロース化させて繊維の親水性を高めた。
結果
AN共重合体に酸化チタン粒子を添加して湿式紡糸しても、繊維には光触媒機能が充分には発現しなかった。そこで、AN共重合体にジアセテートを30%加えて紡糸したところ、その繊維の公定水分率は2.0%から4.0%へと増加した。その繊維に酸化チタン粒子を添加すると、光触媒機能が大きく現れるようになった。さらに、その繊維にアルカリ鹸化処理を行うと、繊維の公定水分率は処理前に比べて2.5~2.8%程度も高まった。これらのアクリル系繊維に対して、アンモニアガスによる消臭性を調べた。その結果、ジアセテートを添加することによって、6時間後までの初期に良く消臭することがわかった。さらにアルカリ鹸化処理を行うと、1時間後であっても酸化チタンを5.0%添加したものでは臭気残存率が僅か3.0%にまで低下した。以上のことより、ジアセテートの添加やアルカリ鹸化処理によって、優れた消臭性アクリル系繊維が得られることがわかった。

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