抄録
目的 亜麻仁油はα-リノレン酸を60%以上含むことから、一般に加熱調理には向かないと言われているが、n-3系脂肪酸の有効な摂取源として期待されている。しかし日本での食用油としての認知度は低く、調理特性に関する研究もほとんど報告されていない。そこで亜麻仁油の炒め加熱における有効な利用法及び嗜好性を明らかにすることを目的とした。
方法 試料油として亜麻仁油(紅花食品(株))、対照油として大豆油(不二製油(株))を用いた。
1)油の官能検査:パネルは本学科学生40名。大豆油を基準とし、亜麻仁油の色、においは目視で、油っぽさ、味、コク、香ばしさは少量を口に含ませ、2点試験法を用いて5段階評価させ、t検定により解析した。
2)加熱後の食材の官能検査:パネルは本学科学生17名。一般に加熱調理に多く用いられる野菜10種及びシイタケ各100g、熱源はIH調理器を用いた。フライパンの表面温度190℃で油(食材の5~10%)を投入し、直ちに食材を加え、120回/分で撹拌しつつ3分間加熱した。調製後直ちに官能検査に供した。1)に準じて色、ツヤ、におい、油っぽさ、味、総合評価を評価させ解析した。
3)加熱前及び加熱後の油について、酸価、過酸化物価、カルボニル価を常法により測定した。
結果 亜麻仁油は大豆油と比べ、油そのものに有意な差が認められた。また加熱前及び後の酸化の諸特性は若干高い値を示した。しかし、炒め加熱を行うことにより食材の味や総合評価では有意な差は認められなかった。加熱直後の喫食であれば、大豆油と同様に加熱調理でき、嗜好的にも美味しく食べられることが明らかとなった。このことから亜麻仁油は加熱調理への利用が可能であるということを結論づけた。