抄録
【目的】 アルコールの過剰摂取で起こる二日酔いには,アルコール代謝過程で生成されるアセトアルデヒドが関係している。一方,柿果実や柿の葉抽出物は,「酔いざましによい」,「血圧を下げる」などといわれてきた。これは,タンニンなどの化合物の働きによるものと考えられている。タンニンは,柿や柿茶に含まれる渋み成分で,たんぱく質,アルカロイド,重金属などと水難溶性の複合体を形成する性質をもつ水溶性植物ポリフェノールである。そこで、柿葉抽出濃縮物(柿茶葉抽出エキスを約10倍に濃縮,乾燥して粉末化したもの)を熱水に溶解し,アセトアルデヒド濃度抑制効果について検討した。
【方法】ICRマウス(10週齢,♂)を1週間予備飼育した後,体重をもとに,柿茶投与群,コントロール群の2群に分けた。16時間絶食後,2時間絶水し実験を行った。柿茶投与群には柿葉抽出濃縮物を熱湯で溶解したものを,コントロール群にはイオン交換水を0.25ml/30g体重量ゾンデを用いて経口投与した。1時間後,どちらのマウスにも同様に30%濃度のエタノール溶液を2ml/kg体重量ゾンデを用いて投与した。投与後,マウスは15分,30分,45分,1時間の間隔で屠殺し,血液を採取した。この血液をメタノールで除タンパク処理し,高速液体クロマトグラフィーを用いてアセトアルデヒド量の測定を行った。マウスは解剖を行い,肝臓の重量を測定した。なお、本実験は昭和女子大学動物実験委員会の承認を得,規定を遵守して実施した。
【結果】両群において、体重に差はなかった。血中アセトアルデヒド量は,コントロール群に比べ柿茶投与群で低下する傾向が認められた。このことから,アルコール摂取前に柿茶を摂取することで,アセトアルデヒドの生成を抑制することができるものと考えられる。