【目的】滋賀県の伝統的発酵食品であるふなずしの独特の風味の生成には様々な微生物が関与している。そこで、PCR-DGGE法により熟成過程の微生物叢の変化について解析を行った。また、呈味成分の変化についても合わせて分析した。【方法】塩漬けふな及び滋賀大学教育学部実験室にて漬け込んだふなずしを2-180日に取り出し分析に用いた。各試料からDNAを抽出し、PCR-DGGE法により微生物叢を分析した。一部のバンドについては16S-rRNA解析により同定した。アミノ酸、乳酸はHPLC分析により測定した。タンパク質はポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析を行った。【結果】PCR-DGGE法により検出されたバンドは、一部を除きほとんどは塩漬けふなから存在しており、魚肉部分と飯部分に大きな違いは見られなかった。塩漬けふなのpHは7付近で90日目ではpH4まで低下した。これは飯漬け期間中に生成された乳酸によるものであり、これにはLactobacillus acidipiscis、L. pluntarumなどの乳酸菌が関与していると思われる。また、塩漬けふなの塩分は約19%であり塩出しおよび漬け込みを経て30日で約5.5%まで低下した。熟成途中から検出された細菌の生育にはpHおよび塩分濃度の変化が関連していると思われる。多くのタンパク質が漬け込み後数日の間に分解され、遊離アミノ酸総量は漬け込み期間とともに増加していた。Bacillus subtilisが検出されていることから、アミノ酸の生成には魚肉に内在するプロテアーゼ以外に微生物由来プロテアーゼが関与している可能性が示唆された。