一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
68回大会(2016)
セッションID: 2J-01
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口頭発表 5月28日 家政教育
近代日本の女子教養における「お稽古事」としての料理教室
*須川 妙子
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抄録

【目的】近代以降、日本の家事の主軸は裁縫から割烹(料理)に移行し、実践的主婦や料理講師の育成を目的とした教育機関(学校・割烹教場)において料理が科学的に系統立てて教授されるようになった。一方で「習うこと自体が目的」であろういわゆる「教養志向」に促された「お稽古事」として料理教室の存在も当時の個人日記、雑誌、新聞等の記載に散見される。本分析においては「お稽古事として料理を習う(教える)」ことの始まりの時期と地域、階層、教育機関との関係を明らかにする。
【方法】明治末期の個人日記、新聞記事・広告から料理教室の募集状況、内容、参加者の感想等を収集し、学校教育、割烹教場に関する先行研究と比較検討した。
【結果】お稽古事として料理を習う女性は幅広い階層にわたり、その要求に応える場は明治期末には存在した。教授内容は系統化されたものではなく、また教授された内容を家庭で再現するなどお稽古後に生活や職業に活かした様子はうかがえない。このような料理教室のあり方は、本分析史料には特段目新しいかたちとしての記載ではないため、明治末期に至る以前から学校教育、割烹教場と並行してお稽古事としての料理教室は始まっていた。その形式を先導したのは関西地域であるとみる。とくに神戸においては外国人居留地住民との接触の中で西洋料理を習うことがその実用性を問わずに価値ある事とされていた。

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