目的 女性では血中女性ホルモン濃度の月経周期性変動に伴い食欲や体重が変化すると言われている。また近年、ヒトの口腔内に存在する脂肪酸センサーが、脂肪酸の口腔内感受性に関与するとの報告が増えている。しかし、女性ホルモンが脂肪酸感受性に与える影響についてはよく分かっていない。そこで本研究では、若年女性において月経周期に伴う血中女性ホルモン濃度の変動が口腔内脂肪酸閾値を変化させ、脂質摂取量に影響を与える可能性について検討を加えた。
方法 健康な若年女性15名を対象とし、月経期、排卵前期、黄体中期で各1回実験を行った。口腔内脂肪酸感受性を調べるため、オレイン酸を用い、全口腔法・3肢強制選択法で検知閾値を測定した。さらに、植物油の濃度を4段階に変化させたスープを用いて脂肪嗜好性の評価実験を行った。実験後、随意摂食を実施し、エネルギー摂取量、脂質摂取量などを測定した。加えて、月経周期の3期それぞれにおいて実験日前後3日間の食事調査を行った。
結果 口腔内オレイン酸閾値は黄体期に比べ排卵前期では低下し、脂肪酸感受性が増加することが判明した。食事調査によると、脂質摂取量および脂肪エネルギー比率が排卵前期では黄体期より減少していた。特に、脂肪酸のうち飽和脂肪酸摂取量が排卵前期には黄体期より有意に低下した。以上より、若年女性では口腔内脂肪酸感受性の月経周期性変動に伴い脂質摂取量が変化することが示唆された。