目的 現在の市場は、趣味趣向の多様化した消費者に対応した様々な衣服が流通し、その中に動きにくそうな極端なデザインも存在する。本研究では“きつく見えるけれども、動くことができる衣服(シャツ)”をコンセプトに、胸囲ゆとり量をできるだけ少なくしたシャツを設計し、動きやすさの構造について検討した。
方法 ①実験服は、胸囲ゆとり量を非常に少なくし、体幹に対して捻れて皺が生じるよう設計した。着用すると前後中心線が15度傾く構造である。袖幅には、上腕最大囲+7.5cmのゆとりを加えた。用布は木綿の平織りである。 ②着用実験の要因は「胸囲ゆとり量」とし、2・4・7cmの3水準を設定した。 ③10名の着用者に対して、動きやすさ、及び外観についての官能評価、筋活動、衣服圧の測定を行い、分散分析等の解析を行った。
結果 ①着用時の捻れによる皺は「見かけのきつさ」を強調しているが、上肢動作によって皺が開いて体表の変化に追従する構造、バイアス地による変形、袖幅の十分なゆとりにより、上肢動作、日常動作が可能であった。 ②着用実験の結果:実験服の胸囲ゆとり量は、2~7cmの範囲で着用できるという一定の評価を得られた。しかし、既製服として多様な体型の消費者を対象にする場合には、カバーできるサイズの許容範囲を考慮すると胸囲ゆとり量は、4~7cmであると考える。 ③平織りの布を用いて、胸囲ゆとり量2cmのシャツが成立した。