建築家中原暢子の茶室設計に対する考え方を明らかにするには、小間・広間・水屋等の構成、及び露地との関連性を明らかにする必要がある。本稿では、その中でも小間を取り上げ、「森邸」茶室三畳台目、自邸「茶室のある家」茶室二畳台目及び「大野邸茶室」茶室三畳台目と各々の本歌との比較を行い、その差異を明らかにすることで中原の小間設計に対する考え方を明らかにする。結果、基本的には、本歌を忠実に再現しようと試みているものの、細部においては大胆な差異がみられた。「森邸」茶室三畳台目では、板畳を設けない代わりに新たに茶道口を追加、自邸「茶室のある家」茶室二畳台目では、照明や空調等の設備的な面を改善し、「大野邸茶室」茶室三畳台目では、床の間脇にある壁面の吹抜きをなくした代わりに、点前座の奥に採光のための下地窓を配置している。以上のことから、亭主としての使い勝手を重視した設計がされていることが明らかになった。