2015 年 39 巻 3 号 p. 773-776
上腕二頭筋長頭腱(LHB)損傷が腱板断裂修復術後の治療成績に及ぼす影響について検討を行った.対象は鏡視下腱板一次修復術を行った腱板完全断裂102例である.LHBにfrayingまたは1/3以下の部分断裂を認めデブリドマンのみを行った損傷群38例と損傷を認めなかった対照群64例の治療成績について評価を行った.術後平均JOA scoreは両群間で有意差を認めなかった.術後可動域に関しては,平均外旋角度が損傷群42.9度,対照群56.7度と損傷群で有意に小さかった.術後MRIにて再断裂を認めた症例は損傷群2例,対照群3例で,術後経過観察中にLHB完全断裂を損傷群で2例認めた.LHB損傷のうち滑動性が良好な1/3以下の部分断裂では,処置がデブリドマンのみでも術後成績に影響を及ぼさないことが示唆された.しかし,LHBの滑動性低下による外旋制限や完全断裂を生じる可能性があり注意が必要である.