2025 年 49 巻 1 号 p. 5-9
我々はこれまで健常者を対象に側方リーチ時の肩甲骨運動と肩甲帯周囲筋の電気生理学的な特徴について報告してきた.しかし,側方リーチにおける体幹と鎖骨に関する動態については不明であった.本研究の目的は前額面上での胸骨傾斜と鎖骨挙上に着目し,動態の特徴を調査することである.対象は健常男性18名18肩(31.3±8.8歳,体重72.1±5.4kg,身長174.2±4.5cm,BMIは23.6±1.6)とした.座位で肩外転90°位を基本肢位とし,10cm,20cm,30cmと側方にリーチさせ,前額面上よりX線撮影を行った.頭部が垂直位,両肩を結んだ線が水平位になるよう設定した.分析項目は胸骨傾斜角度,鎖骨挙上角度(水平線と鎖骨長軸のなす角度),胸骨に対する鎖骨挙上角度,鎖骨‐肩甲棘角度とした.側方距離を要因とした一要因分散分析を行い,事後検定にRyanの多重比較検定を用いた.危険率は5%未満とした.胸骨傾斜角度はリーチ距離間で有意差を認め,20cm以上で有意に増加した.胸骨に対する鎖骨挙上角度は有意に増加したが,鎖骨挙上角度はリーチ距離間で有意差を認めなかった.鎖骨‐肩甲棘角度は有意に減少した.健常者では側方リーチ動作に伴う運動側への胸骨傾斜に対して鎖骨挙上角度を一定に保つために胸鎖関節での鎖骨挙上で調整している可能性が示された.鎖骨‐肩甲棘角度の減少は肩甲骨下方回旋が生じることを示しており,側方リーチ時の運動学的特徴の一つであることが明らかになった.