抄録
著者は妊婦、肉体労務者、非肉体労務者、精神薄弱児、肢体不自由者等各種被検者の重心高ならびに比重心高を身長順、体重順、胸囲順、比体重順、比胸囲順に並べ種々な観点から検討した。重心高について-石川はその平均値を年令的に観察し増令に伴って重心高も高くなるが16才以後は緩慢に上昇し、身長の発育曲線に大体一致するといい、岸本は男女とも15、16才以後は略一定した値を示すという。しかし著者の成績においては上記各肉体的な条件による被検者間における重心高の変動は見ないが、何れにおいてもこれは身長の他さらに体重、胸囲に密接な関係がありこの何れが増加しても重心高は増している。比重心高について-石川及び岸本は16才頃から略一定に近づき20才代では男女とも約56といつている。著者は異った肉体的な条件下における各々の身長、体重及び胸囲と比重心高との高係を見たるに比重心高56∿59を現わし、大差ない結果を得た。著者はさらに肉体労務者と非肉体労務者間における比体重及び比胸囲と比重心高との関係を検索したところ、表37の如く20才代肉体労務者の比体重32、比重心高58に対し、非肉体労務者の比体重31、比重心高59で、各年令層とも略同程度の比体重に対する比重心高は殆んど両者間に差がなく比胸囲についても同様の傾向にある結果を得た。又非肉体労務者の女と妊婦についての検索においても全く同様である。かくの如く生体における重心高は肉体的条件(労仂妊婦)にかかわらず年令、性にてかなり変動するが、何れにおいても殊に身長、体重、胸囲に著しく左右される。しかし比重心高即ち重心の位置は種々な条件下においても余り変化しない。