九州歯科学会雑誌
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油症患者の口腔診査について : 1 色素沈着
六反田 篤深水 康寛清本 和之村上 守良中山 種秋奥村 英彦池尻 茂中山 吉成
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1976 年 30 巻 2 号 p. 107-129

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抄録
油症事件は, 1968年に西日本一帯で起った.その直後"九州大学油症研究班"が設置され, この事件の原因物質であるPCBの人体への影響について種々の分野から多数の研究報告がなされた.しかしながら口腔領域の研究報告は非常に少なく, 歯および歯周組織への影響については, 多くの疑問が残されている.油症患者の症状の1つに全身皮膚および爪の色素沈着が挙げられる.著者らは, 1973年8月, 1974年4月に1才から74才までの男性52名, 女性81名の油症患者について口腔の色素沈着状況を調査し, 次の結論を得た.1. 口腔領域に色素沈着を有する者は, 男86.54%, 女96.30%で非常に高率であった.0才代, 10才代において有意差が認められた.2. 口唇に色素沈着を有する者は, 男67, 31%, 女85.19%で非常に高率であった.0才代∿20才代において有意差が認められた.3. 上下口唇同時に色素沈着を有する者は, 男55.77%, 女80.25%で非常に高率であった.0才代∿40才代において有意差が認められた.4. 歯肉に色素沈着を有する者は, 男65, 38%, 女71.60%で非常に高率であった, 0才代∿20才代において有意差が認められた.5. 上下顎歯肉同時に色素沈着を有する者は, 男57.69%, 女54.32%で非常に高率であった.0才代∿20才代において有意差が認められた.6. 歯牙別にみた色素沈着の発現部位は, 前歯部, 小臼歯部, 大臼歯部のすべてにわたり, 発現率は各部位とも非常に高く, 顎全体にわたって帯状の色素沈着を有する者が多かった.
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© 1976 九州歯科学会
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