九州歯科学会雑誌
Online ISSN : 1880-8719
Print ISSN : 0368-6833
ISSN-L : 0368-6833
総説
乳歯の修復硬組織再生能を高める歯内療法
—FC-CV法—
河田 安史
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 63 巻 4 号 p. 187-203

詳細
抄録
歯根内部吸収(IR)や根尖および根周辺病巣の歯槽骨吸収(BR)にみられるような,乳歯特有の重篤な病的硬組織吸収に対処し得る実用的な治療方法は,約20年前までは手の及ばない領域として不明のままであった.それ故に余儀なく抜歯を強いられていた.その問題を解決するために,FC-CV法と称する新しい乳歯歯内療法が確立された.本法はI型,II型,III型と3種類の治療法に分類されている.
最初に確立されたI型治療法は,IRが根管内に限局した歯髄炎,およびIRが根管を穿孔して続発したBRによる膿瘍形成を伴った歯周炎に対して有効である.そのI型が応用された生活歯髄切断法の一種であるII型治療法は,一部性歯髄炎や,根部歯髄が生活しているにもかかわらず膿瘍により拡大したBRを伴った,乳歯特有の根尖性歯周炎に対して有効である.それらI型,II型治療法のEBMに基づいた感染根管治療法であるIII型治療法は,膿瘍その他の根尖病巣により著しく拡大したBRを伴う根尖性歯周炎(失活歯髄)に対して有効である.ホルマリンクレゾール(FC)とカルビタール®(CV)が用いられるこれら3つの治療法は,驚くべきことに,病的硬組織吸収域を含む上述の病巣部に修復硬組織(修復象牙質や歯槽骨)を急速且つ完全に再生させることが高率にできて生物学的に望ましい治癒をもたらすことを可能にする.
この総説で紹介された本法に関して,その操作手順,技法,X線所見,および術後6~75ヶ月間の臨床-X線学的予後観察による評価が示された.さらに本病変における治癒のメカニズムや臨床的意義が考察された.これらの結果,本法によって,多くの臨床家が,なんらかの歯内療法を要する多数の乳歯を病的硬組織吸収によるそれらの早期喪失から救うことが可能になることが示唆された.
著者関連情報
© 2009 九州歯科学会
次の記事
feedback
Top