抄録
『よく口を開けている』は患者の立場からは主訴の『出っ歯」と関連する症状であり,矯正歯科医の立場からは『ロ呼吸』を想像させる症状である.上顎前突は審美的問題と機能上の問題をもたらし,機能上の問題としては,口唇閉鎖機能不全であり,上顎前突を主訴とした患者に対して,機能的に口唇閉鎖機能が回復できることが審美的改善にもつながり重要になる.
また,口呼吸は口腔周囲の特に舌に関する習癖の発生に関係し,咬合に悪影響を及ぼしていることもある.このような不正咬合に対して,筋機能療法を行うとともにブラケットやワイヤー,ヘッドギアなどの付加装置を用いて機械的に改善する場合,タングガード等を用いる場合がある.
上顎前突は上顎切歯の唇側傾斜や下顎骨の後方位等が特徴であり,前後的問題を主とする.
一方,顎顔面の垂直的問題を主とする不正咬合には切端咬合や開咬がある.しかし,今回のテーマとなっているように,上顎前突は前歯の前後的位置の問題だけでなく,開咬のような顎顔面および歯列咬合の垂直的問題を持ち合わせている場合がある.このような不正咬合に対して,(1) 切歯を挺出させて切歯の被蓋を獲得する場合,(2) 大臼歯の圧下をヘッドギアで行い,下顎骨の上方向への回転を期待する場合,(3) 大臼歯の圧下をインプラントアンカーで用いて行う場合,(4)顎外科手術などを用いて上顎骨の上方回転を行い下顎骨の上方への回転を期待する場合などが治療の選択肢としてある.
本シンポジウムでは以上のような口呼吸と関連の深い口唇閉鎖機能不全や顎顔面,歯列咬合の垂直的問題を持つ症例について実際の診断と治療,および予後について供覧する.