抄録
経口ビスフォスフォネート製剤(BPs)は ,骨粗鬆症の第 1 選択薬として世界中で使われている.これは骨粗鬆症患者の病的骨折の危険の減少において有用であるが,一方でその副作用としての顎骨壊死(BRONJ)が認識されてきた.抜歯などの外科的歯科処置がその主な危険因子であることから,BPs を服用している患者に対する歯科臨床に大きな混乱を生じてきた.2010 年 3 月に日本骨代謝学会,日本骨粗鬆症学会,日本口腔外科学会,日本歯周病学会,日本歯科放射線学会による合同研究班がBRONJ に関連する問題に取り組むためにポジションペーパーを提案した.これはこの問題に関連する医科と歯科の専門家が日本の現状を鑑みて議論した結果として評価できるものである.その ポジションペーパーではBRONJ の危険因子の少ない患者への限定的な外科的介入を許容していた.ところが,2010 年 6 月に厚生労働省が突然,そのポジションペーパーと一部で矛盾する BPs の使用上の注意の改訂を指示した.新しい使用上の注意では BPs を使用している患者への外科的歯科治療は避けることが望ましいとなっている.国内において歯科処置の戦略にダブルスタンダードが生じ,歯科臨床にさらなる混乱をもたらすこととなろう.このような状況 を説明し,われわれ歯科医師はこれからどのようにこの問題に取り組むべきかを議論した.