九州歯科学会雑誌
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統合失調症を伴う左側唇顎口蓋裂成人患者の1症例
川元 龍夫山地 晃二郎冨永 和宏
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2020 年 74 巻 2 号 p. 30-38

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抄録
口唇・口蓋裂の治療は長期に渡り一貫した治療が必要となる.今回他院にて顎裂部への骨移植の施行後に通院が途 絶え,当院来院時には統合失調症のため,一貫した治療の遂行が困難であった左側唇顎口蓋裂患者の1例を経験した ので報告する.初診時年齢48歳9か月,統合失調症を伴う左側唇顎口蓋裂の男性.現病歴は,左側唇顎口蓋裂を伴い 出生,6か月時に口唇形成術,1歳6か月時に口蓋形成術,6歳時に顎裂部への骨移植を受けたが,その後の通院が途 絶え,矯正治療は受けていなかった.顔貌所見は正貌で口唇形成術後の瘢痕を認めた.パノラマX線写真より左側前 歯部歯槽骨の欠損を認めた.側面頭部X線規格写真分析でANB角は0°で上顎骨の後方位を認めた.口腔内所見では上顎歯列の狭窄,左右臼歯部の交叉咬合を認めた.また口腔鼻瘻孔を認め,鼻咽腔閉鎖機能は不良であった.かかりつ け精神科医師より,統合失調症は安定しており,矯正歯科治療および外科治療は可能とのことだったため,マルチブ ラケット装置とW-type拡大装置による不正咬合の改善後,瘻孔閉鎖術と顎裂部への骨移植を行うこととし,矯正治 療を開始した.しかし,動的矯正治療1年ほどで統合失調症が悪化し,動的矯正治療は終了したものの,患者の強い 希望により骨移植や口唇修正術は行わないこととなった.本症例から,統合失調症を伴う患者の治療を行う場合,中 断する可能性も考慮する必要性を再認識した.
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