抄録
歯科治療では観血処置の頻度が高く,歯科医療従事者は患者の唾液や血液を介した感染のリスクが高い.また,歯 科における登院実習は,指導医の下で学生に治療行為をさせる臨床参加型実習にシフトしており,診療技術の未熟な 学生が針刺し事故を起こす確率は高いと考えられる.今回,今後の当院での針刺し事故対策の一助とすることを目的 に,当院における針刺し事故報告書をもとに,針刺し事故の実態調査を行った.
2012年度から2018年度の7年間に九州歯科大学附属病院にて針刺し事故報告があった68件と対象とした.受傷者 の傾向について,月別では6月,11月に,時間帯別では10:30以降に針刺し事故が多く,午前より午後に針刺し事 故が増加した.また,登院生の受傷が最も多く,次いで歯科医師の受傷が多かった.そして,患者への処置中に最も 事故が発生し,処置後の片付けや洗浄,パッキングなどの滅菌準備中の事故も多かった.受傷部位は左右の手指の受 傷が多かった.
針刺し事故を防ぐ対策として,学生の針刺し事故の発生状況について,実習前のオリエンテーションで説明し,片 付けや滅菌準備中の針刺し事故に注意するよう指導した.また,鋭利物の片付けを原則歯科医師・歯科衛生士・看護 師が行うよう変更し,針刺し事故の減少を図った.