抄録
骨は生涯を通してコンスタントにリモデリングする.骨リモデリングの細胞学的および生化学的機序は部位特異的 にバリエーションがある.例えば,長管骨と比べて顎骨には,部位特異的な疾患があったり,間葉系幹細胞の骨形成 能が高かったり,骨のターンオーバーが速かったりするなどの部位特異的な違いがある.顎骨は歯科治療の対象組織 であり,歯科医師はその特異性を知っておくべきである.細胞と細胞外基質は互いに相互作用する.骨の最も主要な 細胞外基質タンパクであるコラーゲンは骨の部位特異性を反映しており,この総説では大腿骨と比較した下顎骨のコ ラーゲンの生化学的分析から明らかになった特徴について述べる.骨基質中に占めるコラーゲン量は骨強度に関連す る因子であるが,それ以上に,コラーゲン分子間の架橋形成およびリジン残基の水酸化とその後の糖鎖添加などのコ ラーゲンの翻訳後修飾は骨強度を決める最も重要な因子である.大腿骨に比べ下顎骨は,骨基質中のコラーゲン量を 多く有し,コラーゲンの成熟型架橋は少なく,リジン残基の水酸化の程度が小さい.コラーゲン架橋の成熟度が低い ということは,コラーゲン線維が未熟であり,より分解されやすく,ターンオーバーを速くできることを示唆する.ター ンオーバーが速く,骨基質中のコラーゲン量が多いということは,骨に柔軟性を与え,飲食やスピーチなどで四六時 中運動をする下顎骨に適している.顎骨のコラーゲン基質は顎骨の機能に適した構造を提供しているといえる.