抄録
歯内療法領域において、コーンビームCT、歯科用マイクロスコープ、Ni‒Ti製ファイル
を駆使するモダンエンドドンティクスが認知されている。近年、国外ではバイオセラミッ
クス(BC)系バイオマテリアルがモダンエンドドンティクスにおける第4の必須アイテムと
なりつつあるが、国内では汎用されておらず、今後、基礎・臨床研究から得られたエビデ
ンスをベースとしたBC系バイオマテリアルの開発・普及・展開が必要である。
歯内療法の対象は、覆髄で対応する可逆性歯髄炎から抜髄が必要となる不可逆性歯髄炎、
さらに感染根管処置や外科的歯内療法の対象となる根尖性歯周炎という連続した疾患で、
対象組織も象牙質、歯髄、セメント質、歯根膜、骨と多様である。そのため、BC系バイオ
マテリアルの開発は疾患の連続性と各生体材料間の親和性・結合性を念頭においてシステ
マティックに行われる必要がある。
当分野は、整形外科領域等で生体内に既に応用されている生体活性型BCであるBioactive
Glass(BG)に着目し、象牙質・歯髄複合体および根尖歯周組織の創傷治癒・再生治療用の
BG配合バイオマテリアルの開発を関連企業と進めている。2009年からゼロベースでスター
トしたBG配合バイオマテリアル開発に関するトランスレーショナル・リサーチでは、BG
を起点として形成されるハイドロキシアパタイト層による象牙質とBG配合バイオマテリア
ルの結合、およびBG配合バイオマテリアルの高い生体親和性に関するエビデンスをin
vitro・in vivo 実験系で示した上で最終製材の品質管理プロセスへと開発を進めた。その
成果として、2017年にBG配合根管充填用シーラーが製品化され、2021年には覆髄まで適応
範囲を広げたBG配合歯内療法用材料が製品化された。現在、国内外で本製品を用いた臨床
研究を進めているところである。
今回、BG配合歯内療法用材料に関する基礎研究成果とそれを反映する臨床成績を示すと
ともに、BG配合再生歯内療法用スキャフォールドへの展開についても概説し、歯の保存に
ついて言及したい。