抄録
本研究は, 生体リズムを考慮した薬物治療援助を行うための基礎研究として, マウスにおけるゲンタマイシン反復投与時の時間毒性メカニズムについて明らかにする。マウスを明期注射群と暗期注射群に分け, 反復投与後7, 14, 21, 28日目に摘出した腎皮質を, 走査および透過電子顕微鏡で検索し, 血清生化学的検査も行った。血清生化学的検査では明らかな腎機能低下は認められなかったが, 近位尿細管上皮に形態学的異常所見が観察できた。活動期である暗期注射群よりも休息期である明期注射群に, 再吸収の低下を暗示する微絨毛の減少や大型ライソゾームの出現が多く認められた。ゲンタマイシン投与時刻の違いによって, 腎毒性の形態学的な差が認められたことは, 投与時刻によって薬物の副作用出現が変化することを示唆している。