経済分析
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医療の質の変化を反映した価格の把握手法に関する研究
西崎 寿美桑原 進
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2023 年 207 巻 p. 220-249

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抄録

内閣府経済社会総合研究所では、GDP統計の推計の精度向上を図ることを目的に、医療の質の変化を反映した価格の把握手法について研究している。本稿では、諸外国や国際機関等における研究成果をもとに基本的な考え方を整理し、医療データを用いたデフレーターの推計について、手法を検討の上、試算を行い、課題の抽出と考察を行った。 具体的には、厚生労働省の「匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報(NDB)」を活用し、傷病分類を細分化することで医療の質を調整する手法を用いてデフレーターの試算を行った。推計の結果、傷病ベースのデフレーターは緩やかに上昇していることがわかった。しかし、今回の試算には、医療の質を調整する上で検討すべき大きな課題が残されている。例えば、今回活用したレセプト情報には技術的に多くの制約があり、また、品質調整にいたっては、国際的にみても、確固とした方法は未だ確立されていない。このため、今回の推計結果は、医療の質を反映したデフレーター研究における一里塚といえよう。 医療デフレーターの推計方法は各国における医療制度の変化を反映しながら発展してきており、今後、医療の質の変化を反映したデフレーターを国民経済計算に本格導入していくためには、より詳細なNDBを活用した推計に加え、内外における医療制度の変化や品質調整に関する国際的な研究の動向を注視しつつ、多面的に研究を進めていくことで、課題を順に克服していく必要がある。

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© 2023 内閣府経済社会総合研究所
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