The KeMCo Review
Online ISSN : 2758-7452
Print ISSN : 2758-7444
一般論文
キュレーターの役割を再考する ―ニューヨーク近代美術館とソロモン・R・グッゲンハイム美術館の例から
山崎 みず穂
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 1 巻 p. 113-127

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抄録
近現代美術館の展示空間では、作品の本質が作家の意図通りには伝わらず、むしろ美術館の内外の政治的影響を受けてコントロールされていることが多い。本論ではニューヨーク近代美術館とソロモン・R・グッゲンハイム美術館の例から、美術館を代表しつつアーティストと最も近く活動を共にするキュレーターの役割について考察する。まず、公のために公開しているはずの近現代美術館の権力構造を振り返る。次に、アーティストと美術館の関係や、その決定の背景にある制度的な政治構造を明らかにした上で、1960年代からのこうした構造に対する制度・体制批判を紹介する。この運動は美術機関の政治的背景を指摘したが、美術館はその政治的構造そのものの中に自らの批判を収容することもできるという結論に至る。展覧会制作におけるアーティストの声と美術館の声を区別し、自らの考えを公衆に透明性を持って表現するための、キュレーターの在り方を模索する。
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